『海峡点描』

“海の上を走っていたレール”のお話です(ヤフブロより引っ越し作業中💦)

カテゴリ: 青函連絡船(檜山丸)

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たぶん1985(昭和60)年頃の画像だと思います。
函館港内を航行する『檜山丸』を函館桟橋対岸・・・・場所は正確には覚えていませんが、背後に中央埠頭の水色と赤い屋根の倉庫が写っているので、たぶん西埠頭あたりから撮影したのでしょう。
函館駅からでは少々時間が掛かったのと、手持ちの望遠レンズでは距離的にキツい感じがしたので、あまり訪れなかったポイント。
この写真も200mm×2倍コンバーションレンズの長ダマをメ一杯のばして撮りましたが、それでもやや小さめだったので四方をカット+拡大加工しています。

出港して‘第二航路’と呼ばれる地点を進む『檜山丸』。
連絡船は中央埠頭を交わした少し先の地点で‘第一航路’へ変針、北防波堤と西防波堤の‘切れ目’をくぐって港外へ出ていきます。
現在この航路を使用している定期船は青函フェリーの各船。
競合相手の青函連絡船がなくなった現在でも、この港口を津軽海峡への出入り口にしています。

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寒々とした山並みを背景に『檜山丸』が沖出しされていました。
長い船体を横たえ、港内航路から外れた錨泊地で夜の出番を待っています。

年末から正月にかけては貨車の扱い量が少なく、甲系統の『檜山丸』や『石狩丸』/貨物便『空知丸』などが揃って函館港に停泊しているのを、よく見かけました。
船内には当直の船員さんが乗船しているはずですが、青森へ向かう連絡船から眺めると全く人気がないデッドシップのようにも思えてしまいます。
もちろんそんな訳はなく、スタンバイの時間になれば紫煙を吹き上げ桟橋へ移動。
私も本便の1便/2便より一足早く出る101便/102便の方を愛用していました。


ところで減便される年末年始、昼間は函館港内で係留される『檜山丸』と『石狩丸』。
101便運航前の青森送り込みと102便運航後の函館帰港はいつやっていたか、疑問に思ったことがありました。
おそらく甲系統のダイヤに従って、
《函館発156便(貨物便)スジで青森へ→101便で函館折り返し》
《函館発102便で青森へ→151便(貨物便)スジで函館へ帰港》
というパターンでは・・・・でも確証がありません。
首をひねっていたら連絡船情報を頂戴している「山行が」ミリンダさんが、元檜山丸船長のNさんと連絡船史料研究会のOさんに話を伝えてくれました。
長文ですけど連絡船に関心がある方々の参考になればと思い、一部省略しておりますが掲載させて頂きます。


【N船長】
ダイヤ、スジ通り運航(貨車が無い時は空船で運航)。
自動車航送便の場合、自動車のみ航送(貨車は無し)。


年末年始等の待機(次航に備え、いつでも運航できる体制)について。
*函館着1340分、1350分乗組み員交代後(待機)沖出し(通常、函館発1440分~青森着1830分、青森発19 25分~函館着2315分)・2315分に沖から函館岸壁に着岸102便010分発。
自動車航送便、客扱い。


102便青森着後は151便青森発500・・自動車航送便、貨車無ければ空船で函館850分着、9 00分乗組み員交代・・(待機)沖出し945分(通常函館発945分~青森発1340分、青森発1435分~ 函館着1825分)・・沖から1825岸壁着乗組員交代

函館発1920分~青森着2315分、自動車航送便。
貨車無ければ空船。
青森発101便015分客扱い、自動車航送便、405分函館着。
*青森発500151便~函館着8 50分着が空船等で次航も運休なら、着岸しないで沖着で830分ランチ交代の場合あり(燃料、水の状態勘案)。


101便着後待機沖出しの場合あり(通常函館発500分~青森着850分、青森発945分~函館着1340分後乗 組員交代)そして、函館発1440分~青森着1830分、青森発1925分~函館着2315分の便が運航不要なら運休。

この場合、沖に停泊しているので、1320ランチ(補助汽船、小船)交代

いずれも、年代によって便名や時間が5分前後、違う場合あり。

基本は3時間50分運航ですが、一部3時間55分運航があった。


【Oさん】
貨物のない時期の甲便は、昼間函館港内でアンカーしているとき、
終航の頃の便名で言うと
待機~156便(沖発)~101便~沖出し~待機
待機~沖入れ~102便~151便(沖着)~待機
貨物があれば岸壁着、そうでなければ沖発/沖着もある。
沖発とは錨泊している船がアンカーを揚げてそのまま走っていくこと。
沖着とは、走ってきた船がそのまま錨地にアンカーを入れて錨泊すること。
着岸するときには、燃料・清水ともに待機中の分も計算して搭載(燃料は機関部、清水は甲板部)

乗組員は156便以外、通常運航のときの時間に合わせてランチ交代(補助汽船に乗って沖泊している船に行く)
甲便の交代は、156便(156-101-150-153)、152便(152-155)、154便(154-157-102-151)で交代時刻は前便着10分後。
沖発、沖着は、船を入れ替えるときにも使用。
貨物船は比較的自由がきくが、客貨船は貨物便でないと沖発、沖着ができない(客便は当然岸壁に着けなければならない)ので、やりくりが必要。


一乗船客の私には判らなかった連絡船の運用や乗組員の交代方法について、とても詳しく教えてくださいました。
まさか1枚の写真から、こんなに色々なことを知ることができるなんて思っていなかっただけに、お三方には本当に感謝しております。
ありがとうございました(礼

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白い航跡を残して・・・・。
国鉄からJR北海道へ運航が引き継がれた青函連絡船にとって、この1年が最後の航海。
ゆっくりと増速してゆく『檜山丸』をファインダーにとらえる機会も、次の春が巡ってくる頃には終わりです。

波を立て船は函館港外へ。
その姿も、だんだん小さくなってゆきました。

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